会社概要

株式会社東邦パスカル 代表取締役 松本 創氏
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会社名株式会社東邦パスカル
代表取締役松本 創
所在地千葉市若葉区千城台北1-9
設立2010年7月(法人化)
資本金1,000万円
社員数8人(2023年7月時点)
事業内容油圧機器修理/シリンダ-再生製作、油圧部品加工・販売 等
HPhttps://t-pascal.com/

支援内容

活用した支援
・経営・技術相談
・キャリアアップアドバイザー相談
得られた効果
・従業員のモチベーションアップ
・ベトナム人人材の活躍
・社内の士気向上

課題
・従業員が定着しない
・離職者が相次ぎ人材不足
解決策
・キャリアカウンセリングの導入(無料)
・産業雇用安定センターの紹介(無料)
・ベトナム人人材紹介会社の紹介(紹介先有料)
・トップマネジメント研修の紹介(紹介先有料)

株式会社東邦パスカルは、油圧シリンダや油圧モーターなど油圧機器の修理・製作、建設機械や地盤改良機の整備・メンテナンスなどを事業展開する企業です。創業から30年以上の歴史を持ち、20年近く勤める従業員も在籍しています。

比較的定着率が高かったにも関わらず、近年一気に離職者が増加、社内の士気もどんどん下がっていきました。人材の確保と従業員の雰囲気(職場環境と人間関係)の改善が急務だと感じた松本社長は、千葉市産業振興財団に相談します。キャリアアップアドバイザーの小室さんから、人材確保には人材紹介の活用、従業員の雰囲気改善にはキャリアカウンセリングとトップマネジメント研修を勧められます。

初めは半信半疑だったという松本社長。しかし、キャリアカウンセリングにより従業員のモチベーションが向上し、ベトナム人のズンさんが入社し大活躍、相次いで日本人が2人入社するなど、社内の雰囲気が180度変わる結果となりました。

今回、松本社長、現場管理者の菅さん、ベトナム人人材紹介会社経由で入社したズンさんにインタビューを行いました。

ベトナムから来日したズンさんと現場管理者の菅さん

-千葉市産業振興財団を知ったキッカケと、支援に踏み切った決め手を教えてください。

松本社長:千葉市産業振興財団は何度か電話でご連絡をいただいたことがあり、経営支援をしてくれることは知っていました。実際に相談をしたのは2021年の冬、従業員が一気に2人辞めてしまい、さらにもう1人から辞めたいと申し出があり、なんとかできないかと思ったことがキッカケです。
キャリアアップアドバイザーの小室さんから、人材確保案として産業雇用安定センターと、ベトナム人材の人材紹介会社をご紹介いただき、従業員のケアはキャリアカウンセリングと、トップマネジメント研修を行うことを勧められました。
正直、外国人人材もキャリアカウンセリングも未知の世界だったため半信半疑だったのですが、可能性があるならやってみようと思い、支援を受けることを決めました。同時に、僕自身の意識改革として、トップマネジメント研修も受講しました。

-キャリアカウンセリングを受けることに対し、従業員の方はどのように感じられましたか

菅さん:率直に言うと、初めは社長に言われたから受ける、という気持ちはありました。他のメンバーも同様だったと思います。でも、社長や管理者に言えないことや、社内では言い出しづらいことって必ずあるじゃないですか。それを第三者に聞いてもらうことで、気持ちが軽くなっていく感覚はありました。辞めてしまった人は、誰にも言えず自分の中にモヤモヤを溜め込んでいって、最終的に限界を超えてしまったのかもしれません。

小室:1回目のキャリアカウンセリングでは、社長のおっしゃる通り皆さんモチベーションがとても下がってしまっていて、危うい状態だと感じました。まずは息抜きになるよう話を聞いて、会社に改善して欲しいことなどをヒアリングし、社長に改善策をいくつかご提案しました。

松本社長:キャリアカウンセリングの日はもうこっちがビクビクしちゃって、小室さんのフィードバックが怖かったですね(笑)。でも、具体的な助言をくれたので、できることからやっていこうと思いました。
小室さんに初めに言われたのは、オフィス環境の改善でした。当社はクライアントの工場内に事務所があり、休憩スペースも兼ねているのですが、男所帯というのもあり乱雑な状況でした。事務所でゆっくり休みたいという声があると聞き、机やイスをキレイにして大画面テレビを設置し、ゲーム機も購入しました。以前は休憩時に事務所を使う従業員はあまりいなかったのですが、整理整頓をしてから結構使ってくれるようになりました。今ではみんなでYouTubeを見ていますよ(笑)。

整理整頓の行き届いた事務所

小室:やはり社長がすぐに実践してくれたことが成功につながったと思いますよ。1、2回目は、菅さんがおっしゃるように従業員の皆さんはキャリアカウンセリングについて懐疑的だったようです。ただ、回数を重ねるごとに、面談で話したことが個人名のわからない状態で社長に伝わっていて、それを社長がちゃんと実行してくれるということを実感されたのでしょう。「この面談は無意味ではない。社長が自分達の意見を聞いてくれているんだ。」という前向きな気持ちとなり、モチベーションの向上につながっていったのだと思います。

松本社長:一番驚いたのが、離職寸前だった若手従業員、石橋のモチベーションが振り切れるくらい上がったことです。今では現場のリーダーとして、みんなをけん引する存在になっています。

小室:石橋さんは、初回の面談時に比べると別人のようにモチベーションが向上しました。ただ、初めの時も仕事に対する熱意が無いのではなく、どちらかというと「もっとやりたいのにできない」「尊敬していた先輩が辞めてしまった」など、環境を変えれば前向きになれるのではないかという印象を受けました。そこで、松本社長に従業員にもっと仕事を任せてみてはどうかとお伝えしました。

松本社長:僕自身も技術畑だったので、現場に出るとどうしても口を出したり手を出したりしてしまうんです。なので、基本的に現場には出ず、営業回りやパートナー企業の対応などを僕1人で行っていました。でも、小室さんからアドバイスをもらって、石橋と一緒に福島のパートナー企業に訪問したり、取引先の社長がお越しになった時は同席してもらったりと、彼の仕事の幅を広げていきました。
実は石橋はいろいろなアイデアを持っていたみたいで、しばらくするとお客さんに会う時は清潔なイメージの白い作業着が欲しいと言うんです。それもちゃんと作りましたし、今、現場で使う新しい作業着を選んでいるのですが、石橋をまとめ役に指名して、みんなで決めるように言っています。意見がまとまらずに戸惑うこともあるようですが、以前は僕1人で決めていたことも、できるだけ従業員に振るようにしました。

モチベーションが向上し、現在はリーダーを務めている石橋さん

-1年半前からは想像もつかない変化ですね。

松本社長:本当にそうです。もう全然違います。あとは、技術的な部分のモチベーションも変わっていて、従業員みんなが積極的に資格を取りたいと言うようになりました。協力会社から、「技術向上や資格取得に向けて学ぶにはポリテクセンター千葉がオススメ」と聞き、セミナーを受けています。
正直、ご紹介いただいた時は「僕たちみたいなプロに、先生が教えられるの?」という気持ちだったんですよ。なので、まずは僕が受けてみました。そうしたら、わかりやすいんですよ、ポリテク。率直な感想を従業員に伝えたら、自分達も受けたいという希望が出て、できるだけスケジュールを調整して受けられるようにしています。一番初めに修了したのは、モチベーションが一番上がっている石橋です。さらに、石橋は国家資格を取りたいと言っているので、本格的に資格取得支援制度や資格手当の見直しが必要になってきたと感じています。

小室:前回のキャリアカウンセリングで、石橋さんの第一声が「小室さん、うちの会社変わったでしょう!」でした。他の従業員の方も目に見えて表情が明るくなり、会話も増えたと聞き、本当にキャリアカウンセリングをご提案してよかったと思っています。

松本社長:ズンさんは本当に真面目で優秀で、ものすごくしっかりしています。ズンさんが入社してすぐのタイミングでオフィスの整理整頓をすることになったのですが、率先して机の移動を手伝ってくれたり、行動を先読みして動いてくれて、「この子はすごいな」とすぐに感じました。

菅さん:私がズンさんの教育係としてマンツーマンで実務を行っているのですが、本当にびっくりするくらい飲み込みが早いんですよ。ズンさんは入社と同時に来日されたので、まだ日本語は勉強中です。そのため、基本的に私が先に作業を見せて、目で覚えてもらうのですが、ズンさんは見たら1回で覚えちゃうんです。日本人でも1回で覚えた人はいないので、初めはすごくビックリしました。
どんどん物事を吸収していくので、試しに安全スローガンのテストを受けてもらったところ、まさかの21問全問正解。クライアントに表彰されました。
今はCADの操作や、建設機械の簡単な整備などを覚えてもらっている最中です。

ズンさん:分解や組付けなど、楽しいです。勉強になります。まずはCADができるようになりたいです。菅さんはすごく優しいです。最近、家族を日本に呼ぶことができました。

住む家や家電なども会社が支援してくれたと話すズンさん

松本社長:これから、資格もどんどん取って欲しいと思っているのですが、資格取得には言葉の壁があります。ズンさんを紹介してくれた会社がアカデミー機能も持っているので、日本語教育も含めたフォローアッププログラムをお願いしています。彼には管理職の素質があるので、いずれはマネジメントを行う立場になって欲しいですね。

-最後に、今後の事業展開と千葉市産業振興財団にこれからも支援して欲しいことなどがあれば教えてください。

松本社長:そうですね、事業展開は、今はおかげ様で仕事が増えて、クライアントからもっと稼働して欲しいという要望をいただいています。ただ、人材がまだまだ足りないので、新しい人が入ってくれてご依頼に応えられるようになることと、従業員のモチベーションがとても上がっているので、ある程度は彼らに好きにやって欲しいということですね。

千葉市産業振興財団の小室さんには本当に助けていただきました。こんなに効果がてきめんだとは、本当に想定していませんでした。なので、これ以上求めることはあまりありません。今後も、主に人材面で引き続きご支援いただければと思っています。

-ご協力ありがとうございました。

取材協力:株式会社キウ(Kiu)