会社概要

アイコミュニケーションズ株式会社 代表取締役 布留川 剛仁 氏
会社名アイコミュニケーションズ株式会社
代表取締役布留川 剛仁
所在地千葉市稲毛区山王町271-1
設立2006年12月
資本金1,000万円
社員数13人(2026年2月時点)
事業内容災害対策電力ユニット「Eneco」の開発・設計・工事・販売、各種電気工事 等
SNS(Instagram)https://ai-comm.net/

支援内容

活用した支援
・コーディネーター相談
・『ベンチャー・カップC H I B A』応募
・新規市場開拓支援
・トライアル発注認定事業(千葉市)等
得られた効果
・令和6年度千葉市トライアル発注認定商品に認定
・協業先発掘及び製品認知度拡大
・「千葉市元気企業」の認定

課題
・行政・地域との連携
・行政系の制度活用・実績づくり
解決策
・コーディネーターによるフェーズごとの伴走支援
・各種申請サポート 等

アイコミュニケーションズ株式会社は、電気工事業を基盤に、再生可能エネルギー設備の施工・販売を手がける企業です。現在はさらに独自開発のエネルギーソリューション事業へと事業領域を広げています。代表の布留川剛仁氏は、大手電力会社を退職後、同社に入社。営業職からスタートし、「より多くの人に、納得できる価格で、必要な価値を届けるには何が必要なのか、何ができるのか」を常に考え、行動しました。

その積み重ねの結果、「技術力とそれを実現できる人材を揃えることができれば、工事を自社で完結でき、さらに仕入れ原価と提供可能な価値の構造も最適化できる。 そうなれば、“多くの人が受け入れられる価格で最高のコスト・パフォーマンス”を実現できる」という結論に至りました。社長就任後、このコンセプトを当社の基本経営方針に据えて、単なる電気工事会社にとどまらず、エネルギーメーカーとしての事業基盤を築いてまいりました。

災害レジリエンスを高めるエネルギーソリューション「Eneco」を開発

-御社の事業内容を教えてください。

創業当時は太陽光発電やエコキュートの設置などの提案営業がメインでした。しかし、当時は太陽光発電といえば高額商材で、「なぜここまで高いのか?」と考えた時に、自分達で工事を行えば仕入れ原価と適正マージンで提供できるという結論に至りました。

そこから、限られた環境の中で工数請負の人工(日当)工事から始め、工事の施工に加えて材料の調達・手配も行う一括請負へ、さらに商材を増やしながら電気工事業などの必要な許認可を整備し、元請け化へと進みました。販売や卸といった商流にも挑戦し、少しずつ事業の幅を広げていきました。

こう話すと順調に聞こえるかもしれません。しかし、私が代表取締役社長に就任した2021年当時、当社は数千万円の赤字を抱えており、従業員も定着しない状況が続いていました。会社を立て直し、事業を広げていくには人材の育成が欠かせないと考え、着手したのが「理念経営」の徹底です。

まず、8か月間かけて社員、顧客、取引先へのヒアリングを実施し、会社として大切にすべき価値観や行動指針を言語化しました。その結果生まれたのが「クレドブック(企業の「経営理念」「ビジョン」「バリュー(価値観)」を体系的にまとめた冊子)」です。

当時、当社に存在した30以上の行動指針を10項目に整理し、毎月の理念共有会で繰り返し発信して浸透を図りました。社員が自分事として向き合っていけるよう、一人ひとりが自分で3つのアクションプランを設定し、実行と振り返りを継続しました。

「なぜこの判断をしたのか」「なぜこの行動が必要なのか」を説明できる組織づくりを徹底したことで社内の意思統一が進み、外部からの信頼も高まっていきました。その結果、就任から2年で売り上げが倍増し、赤字も解消でき、安定した経営基盤を築くことができました。

そして、近年の災害対策やエネルギー領域での社会的な関心の高まりを受け、2024年には「Eneco(エネコ)」という独自製品の開発・販売を開始しました。Enecoは小型蓄電池を活用し、分電盤と接続することで災害時に自立電源として機能する仕組みで、「一家庭・集合住宅単位での電源確保」を可能にし、小型のソーラーパネルにより自家発電もできます。災害時のレジリエンス(災害発生時に被害を最小限に抑え、迅速に復旧・復興する能力のこと)向上に寄与する新しい提案ができればと思っています。

Eneco製品イメージ

-財団の支援を受けたキッカケを教えてください。

新規事業としてEnecoの展開を進めるにあたり、災害対策という側面から行政との連携が不可欠だと感じていました。しかし、当社は今まで行政との取引や支援を受けた実績がなく、支援の入口や進め方がわからない状況でした。

そんな中で、所属する経営者団体の活動で千葉市役所の担当者と接する機会があり、千葉市産業振興財団(以下、財団という)の存在を知りました。少し緊張しながら財団に訪問して、担当のコーディネーターに事業にかける想いを熱弁しました。

熱心に話を聞いてくれて、まず勧められたのが、千葉市トライアル発注認定事業と、『ベンチャー・カップCHIBA』へのチャレンジでした。「どうせやるなら、本気でやろう。」と思い、両方とも取り組むことを決めました。

申請資料を作成するにあたり、コーディネーターと膝を突き合わせて「誰の、どんな困りごとを、どう解決するのか」という我々が目指す世界観を丁寧に言語化し、各担当者へ伝わるような言葉選びや、コミュニケーションの仕方を一緒に考えていきました。

当社は創業当時から、「儲かるからやる」ではなく「適正な価格で人々が困っていることを解決する」ことを徹底し、事業を拡大してきました。Enecoも同様に、「高額で手が届きにくい災害対策機器を、より手頃に、より現実的に届けるには」という問題意識から生まれています。コーディネーターには、「コンセプトの良さ」と「実行力」、そして「正面から事業を語れる力強さと矜持」を前面に出していくようアドバイスを受けました。

令和6年度トライアル発注認定商品に!認定だけでは終わらない伴走支援を実感

トライアル発注認定事業では、申請後2回の書類審査と最終審査としてプレゼンテーションが行われます。当社は無事に認定を受けることができ、Enecoが令和6年度のトライアル発注認定商品となりました。トライアル発注認定商品になるメリットは、なんといっても千葉市が積極的にPRを行ってくれることと、さらに認定商品の一部を市が試験的に導入し、評価してくれることです。他にも、展示会への出展支援や販売促進支援など、さまざまな恩恵を受けられます。

コーディネーターを始めとして、財団や市の担当者の方が積極的に市内の関係部署との調整や導入先探索の面で支援をしてくれ、紹介をいただくたびに当社は導入に向けた説明・提案を重ねました。導入の過程では、最初は新しい概念ゆえに理解に時間がかかる場面もありましたが、千葉市農政センターに試験導入することが決まりました。

導入先となった千葉市農政センターでは、設置環境や利用状況を踏まえた細かな調整が必要となりました。電源の取り回しや設置スペース、非常時の対応など、一つひとつを現場とすり合わせながら進めていきました。対面での打ち合わせや現地確認を重ねることで、行政側の理解も深まり、Enecoの価値がより正確に伝わっていったと思います。

工事が完了し、価値が目に見える形になった段階で、関係者から製品と取り組みに対する評価を受けました。行政の仕組みの中で実績が積み上がることで、製品の社会的信用が増し、次の提案や商談の入口が広がっていくと考えています。当社にとってトライアル発注認定事業での導入実績は、行政・地域との連携を進める上での大きな足掛かりとなりました。

令和6年度トライアル発注認定事業 授賞式

しかし、『ベンチャー・カップCHIBA』では悔しい思いも味わいました。一次審査、二次審査と順調に進みましたが、プレゼン審査のプレゼンテーションで商品の新規性に関する質問があり、「企業秘密に触れないように事業の核心部分をどう伝えるべきか」と苦心しました。

結果として受賞は逃したものの、この経験は、事業の見せ方やストーリー構成力を高める貴重な機会となりました。また、最終審査に残ったことで、審査に携わった方々や関係者とのネットワークが広がり、その後の営業活動や採用活動にも好影響を与えています。落選したから終わりではなく、そこから何を学び、どう次につなげるかが重要だと実感しました。

-他に活用した制度等はありますか?

はい、当社は防災関連等の展示会への出展も継続的に行っているのですが、コーディネーターから、展示会に出るなら「新規市場開拓支援事業」を活用できると教えてもらいました。もちろん活用したいと回答し、コーディネーターと綿密な打ち合わせを重ねて申請書類を作成しました。その結果、令和6年度、7年度と2年連続で当制度を活用することができました。正直、無料で受けられる行政の支援でここまで親身になってもらえると思っていなかったので、嬉しい誤算でした。余談ですが、実は、担当コーディネーターは亡くなった父と同年齢なので、今では「親父」と呼ばせてもらっています。(笑)

新規市場開拓支援事業では、展示会出展費用の一部を助成されるため、1回分の費用で2回出ることが可能になりました。制度活用により出展機会が増えることで、製品・事業の認知が進み、関係者のネットワークが拡張しました。特に予算の限られる中小企業にとってはありがたい支援制度だと思います。

また、行政とのつながりができたことで、元々関心のあった防災教育やエネルギー教育への貢献も実現させる所存です。まずは、千葉市科学館での企画展示に参加できることになり、子ども達が防災意識を身につけられるワークショップなどができればと考えています。

コーディネーターと談笑する様子

-今後の展開について差し支えない範囲で教えてください。

Eneco事業は、限りない可能性を秘めています。すでに全国規模の企業複数社との取引が進んでおり、大手デベロッパーとはEnecoを集合住宅に標準採用するという協議を進めています。年間数千戸規模での導入が見込まれる案件もあり、事業規模は将来的に数百億円規模に達する可能性もあります。その受け皿として現在検討しているのが、地域ごとに小さなチームをつくり、現場の仕事と地域密着の価値を両立しながら、全国47都道府県へ広げていく構想です。さらに、国内特許をすでに7件取得しており、国際特許も間もなく取得できる見込みであることから、海外事業部からも提案を受けています。ゆくゆくは、国内実績を基盤とした海外展開も視野に入れています。

平時は生活の中で役立ち、有事には電源として機能するEnecoという分散型のエネルギー活用が進むことで、地域の防災レジリエンスの底上げに貢献できればと思っています。これを実現するために、各地銀や信金と連携して金融面での信用力も強化しており、行政・金融・民間の三位一体の連携体制が整いつつあります。

-最後に、財団に期待するなどがあれば教えてください

財団には、トライアル発注認定事業を起点に、申請支援、価値整理、導入先探索、制度・展示会活用などの伴走支援をしていただくことで挑戦が加速できた実感があり、感謝しています。

期待することとしては、「次世代人材の育成」ですね。経営者研修などはたくさんありますが、次の層、すなわち幹部・次世代リーダーが育つ場があまりないと感じています。特に中小企業は後継者不足が深刻で、黒字であっても後継者が見つからず廃業する企業や、M&Aによって買収されたもののうまくいっていないケースもよく聞きます。

「リーダーとは何か」「リーダーシップとは何か」「幹部の役割とは何か」といった根本テーマを、座学だけでなく、対話や実践の中で学び合う場があることで、企業の成長と地域の産業力向上に繋がっていくと思います。

-ご協力ありがとうございました。

取材協力:株式会社キウ(Kiu)