会社概要

株式会社フジ給食 代表取締役 安藤 規雅 氏
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会社名株式会社フジ給食
代表取締役安藤 規雅
所在地千葉市稲毛区六方町217-2
設立1972年10月
資本金4,800万円
社員数107人(2025年2月時点)
事業内容給食弁当、来客会議用料理弁当、折詰仕出し、行楽・行事弁当、給食材料の販売等
HPhttps://www.fujikyusyoku.com/

支援内容

活用した支援
・経営、技術(コーディネーター)相談
・専門家派遣事業 等

得られた効果
・月ごとの損益が迅速に算出可能となった
・製造工程の見直しを行い、改善箇所が見つかった
・経営者自身の数値管理に対する意識が高まった

課題
・数値に基づいた経営管理体制の構築
・コスト管理や収益性の向上
・経営に関する全体的な支援
解決策
・CHIBA-LABO創業個別相談(会員限定)
・各種申請サポート(無料)
・専門家の紹介(無料)
・産学連携支援(費用の一部助成) 等

株式会社フジ給食は、千葉県内で弁当製造および給食業務委託を手掛ける企業であり、1972年の創業以来長年にわたり地域の食の提供を担ってきました。主に企業向けの仕出し弁当や、病院・福祉施設・学校などの委託給食を運営し、安全で美味しい食事を提供することを強みとしています。提供する弁当は1日約3,000食、給食は数百件に上ります。

しかし、原料価格の高騰や健康志向への変化、顧客の多様化に伴う特定ニーズへの対応、入札競争の激化などによる外的要因と、売上や原価、利益率の詳細な分析に至れず、事業ごとの採算性を明確に把握しづらいという内的要因により利益率が低下し、根本的な経営改革の必要性を感じていました。

こうした課題に対応するため、同社は千葉市産業振興財団(以下、財団という)の専門家派遣事業を活用し、管理会計の導入や業務効率化に着手し、数値に基づいた経営改善を進めています。

-千葉市産業振興財団の支援を受けたキッカケを教えてください。

財団とは先代からの付き合いがあり、助成金の申請や食品系の資格取得支援サポート等でお世話になっていました。私が入社したのは創業から20年程が経った34年前で、社長を継いだのが約10年前です。社長を継いだ時には、すでに財団と定期的にお付き合いをさせていただいている状況でした。

当社の近年の経営状況はあまり芳しくなく、食堂や仕出し弁当の利用率の低下などにより、過去最高益の時と比べると現在の売上高は半減している状況です。売上を上げるには、数値管理が必要不可欠ですが、当社では感覚的な経営を行っており今まで管理会計を導入していませんでした。結果、やるべきことに対応するのに精一杯で、長期的な戦略を立てることが難しく、社長の私の気持ち的には「今年1年を乗り切れるのだろうか…。」という状況にまで陥ってしまっていました。

利益の出る体質に改善するには、まずは現状を把握できるようにしなければなりません。当社は大きく分けると「仕出し弁当事業」と「給食業務委託事業」の二つをメインとしており、「おそらく仕出し弁当事業の採算がよくないのでは?」という感覚はあったのです。大まかな数字は把握しているけれど、具体的に仕出し弁当事業の”どの部分”にどのくらい負担がかかっているのか、改善できるところはどこなのかが明確化できていませんでした。

数字によっては、仕出し弁当事業自体を撤退した方がよいのではないか、ということも考えるフェーズに差し掛かっています。ただ、仕出し弁当事業は当社の創業事業で、当事業ありきの経営体制・組織体制なので、そんな簡単に決められることではないのもわかっています。

仕出し弁当事業がなぜこんなに厳しくなったのかと言うと、やはり原材料の高騰が大きいと思います。お米の価格もどんどん上がっているし、1年間で数十円値上げしないと割に合わなくなってしまっている。しかし、毎回毎回値上げするわけにもいきませんから、ご飯の代わりにパンを提供するなど、私たちなりに工夫できることはしています。

そんな時、財団のコーディネーターに近況報告をする機会があり、数値化について相談をしたところ、食品業界に長く携わっていた専門家がいるので、専門家派遣を使ってみませんか?と提案を受け、専門家の力を借りて、根本的な部分を見直していこうということになったのです。

同社が提供する仕出し弁当

-支援を受けると決め、具体的にどのようなステップで進めていったのですか?

まずは、専門家のヒアリングを受けるところから始まりました。現在出せている数字を見てもらって、切り分けられるところは切り分け、仕出し弁当事業と給食業務委託事業が一緒になってしまっているところは、「何分の一が仕出し弁当事業ですね。」と細かいデータを出していってくれました。記録によるとヒアリングと面談は合わせて7回あったようですが、感覚的にはもっと多いような気がしています。それくらい、濃密な内容だったのでしょう。

最終的にはザックリとしたデータから数値を出してくれて、栄養士が出していた原価と数十パーセントも違っていると言われた時はさすがにびっくりしました。(笑)私たちだけでは絶対にそこまでたどり着けなかったと思います。

あとは、工場のオペレーションの改善提案も行ってくれました。当社の工場には合計80人程度の人員がいて、20時間3交代制で稼働しています。専門家の方は実際に稼働している工場に何時間もいらして、写真を撮ったりオペレーションをチェックしたりしていました。食品を扱うため常に低温の現場で、作業員からのプレッシャーの中で2、3日も立ち会われていたので、「ここまでやってくれるのか!」と驚きました。今までにも経営支援を受けたことはありましたが、ここまでしてくれたのは初めてだと思います。それだけ、専門家の方の熱量がありました。

最終的に、工程の分析をしていただいて、非効率な部分を特定することができました。オペレーションを変えるなり、スキルアップ研修を行うなどして人員のスキルを上げると、全体的な効率が2割上がる、ということがわかりました。

唯一の心残りは、専門家に求められた複数のデータを、私たちが提出できなかったことです。事業に追われ、次回までの宿題ができていないということもありました。専門家の真摯な姿勢にこちらが応えられなかった部分があり、申し訳ないことをしてしまったな、と思います。

また、専門家の派遣日数は15日間以内という規定があるので、ある程度数値を出してもらった後はコーディネーターの力を借りつつ、私たち自身で管理ができる体制にしていく必要があります。まだまだできていないことがたくさんあるので、事業を継続しつつ少しずつ改善をしていかなければなりません。時間を作るためにも、まずは利益の確保が最優先です。

同社が提供するオードブル

-専門家派遣で数値化されたデータは、どのように活用していますか?

現在、少しずつ数値化をしていって、お恥ずかしい話以前は損益を出すのに1年くらいかかっていたのですが、現在は1カ月半くらいまで追いつくことが可能になりました。経営を圧迫していた派遣スタッフや業務委託スタッフの見直しを行い、月数百万円のコストを削減することもできました。

オペレーションの部分は、従業員のスキルアップが必要という結果だったのですが、当社が直面する「従業員の高齢化」という課題が浮き彫りになったと感じています。現在、従業員の平均年齢は50歳を超え、60代、70代のスタッフも多数います。40代は少なく、30代はほとんどいません。新しいスキルを習得して…という年齢ではないんですよ。

仕出し弁当の工場内だけでなく、給食業務委託事業も同様です。受託先でサポートはできても調理や洗い、盛り付けなど全部できる人というのは育てるのが難しいんです。受注する案件自体がどんどん変わっていく可能性もありますし、新しい受託先が見つかった時も対応できるような人材育成が課題です。

利益が出せないというのは、そのような課題を引き起こすんです。給料も毎年上げられないし、福利厚生もあまり整えられない。結果、新しい若い人材がなかなか入ってこないし、育ってこない。大袈裟ではなく、この産業自体が残るのか、淘汰されるのかの瀬戸際になってきていると感じています。

私たちにできることは、今までお世話になった方や従業員、そして必要としてくれるお客様がいる限りは、事業の存続を目指してできることをするだけです。新しい取り組みとして、従来の法人向けや学校給食だけでなく、新たな市場への展開も検討しています。実際に、何度か旅行会社にインバウンド団体旅行者向けの仕出し弁当を提供したこともあります。今後は、多様な食文化に対応するため、ハラール対応の弁当の開発もできたらと思っています。

数値化により現状を客観視し、基盤を整え、次世代を担う人材に選んでもらえる会社にし、新規事業等も展開する…先は長いですが、今回、専門家派遣により第一歩を踏み出せたと感じています。

本社外観

-最後に、財団にこれからも支援して欲しいことなどがあれば教えてください。

経営に関するワンストップ支援は引き続き活用させていただければと思っています。経営をしていると、「どこに問い合わせたらよいのかわからない。」ということがたくさん出てくるので、まだ利用したことが無い方にとっても、「まずは財団に聞いてみよう。」という認識が広まっていくとよいですね。

まさに今回の専門家派遣もそうですが、「専門家の専門家」がいて、「この分野はこの人」、「こういうことを聞くんだったらこの人」、というのを無償で繋げてくれる機関はあまりないと思います。第三セクターだからこその幅広いネットワークがありますし…財団だからこそできることがもっと認知されて、千葉市の事業者がどんどん活用するようになって欲しいですね。あとは、紹介だけでなく、「この問題解決のためには、こういう道筋があるよ。」というある程度のプランニング、レコメンデーションなどの伴走をしてもらえるので非常に心強いです。

私たちの場合は「数字に基づいて収益の良し悪しを客観的に判断できるようにしていきましょう。」ということで専門家派遣事業につながったので、コーディネーターにはとても感謝しています。我々素人がいくらがんばっても専門家に勝るものはないので、今後も、頼れるところは頼っていきたいです。

-ご協力ありがとうございました。

取材協力:株式会社キウ(Kiu)